建設業の人手不足が解消?その理由と今後の見通しを解説
2021.04.28
「人手不足」は、長きにわたって建設業界人の頭痛の種。
しかしこのほど、総務省が「建設業界の就業者人口が2年連続で増加」というデータを発表し、大きな注目を浴びました。 建設業界の深刻な人材不足は、本当に解消されつつあるのでしょうか?
今回の記事では、その実態に迫ります。
(今回のポイント)
①建設業の就業者数は、ここ2年で増えている!
②しかし、長いスパンの減少傾向は止まっていない……
③人材確保のための効果的な施策は3つ!
2年連続で就業者人口が増加!

総務省の発表する「労働力調査」によれば、2016年に492万人だった建設業の就業者人口は2018年に503万人。 これは2年連続での増加であり、現場を長らく苦しめていた人材不足傾向も、これでストップしたようにも思えます。
しかし、実はこのデータには「裏」があるのです。
参考:総務省「労働力調査」
・就業者数は増加していても、人材不足は深刻化!
建設業就業者人口の推移を遡ると、2014年は505万人で、2015年は500万人。
建設業界の就業者数は2016年に大きく低下し、ここ数年で回復基調にあるとはいえ、2014年の水準にはとても追いついていないという実情です。 2021年の数字はまだ集計されていませんが、新型コロナウイルスの影響で現場の数が減っているため、就業者数は再び減少するでしょう。
少子高齢化、若者離れといった建設業の構造的な悩みは改善しておらず、建設業の慢性的な人材不足はまだまだ解消されなさそうです。 実際に建設現場では、あいも変わらず「職人がいない」「若手人材を確保できない」「高齢化が進んでいる」といった悩みの声が聞かれます。
・外国人労働者の活用状況は?
ここで注目すべきが、外国人労働者の存在。 彼らはつねに人材不足の現場における救世主として期待されていますが、実際はどうでしょうか。
2020年1月現在、建設業で外国人労働者を雇用する事業所は、2.5万ヶ所*。 建設業以外の業種では前年比平均で12.1%、外国人を雇用する事業所が増えているのに対し、建設業は前年比28%の増加でした。
人数で見ると前年より9.3万人も増えており、他の業種に比べ、建設業の外国人労働者活用は加速化傾向にあるといえるでしょう。 国籍で見ると、顕著に多いのがベトナム人で、実に4.6万人ものベトナム人が建設現場で働いています。
かつては外国人労働者といえば中国人が多かったものですが、建設現場で働く中国人は、1.4万人。現在はベトナム人の割合が抜きん出て多いのです。
*「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和元年10月末現在)
・外国人労働者雇用における課題は山積み
しかし、現場の建設会社からは、外国人労働者にまつわる悩みの声も聞かれます。 その原因として一番多いのは、日本人と外国人の文化の相違によるトラブル。 生活におけるさまざまなマナーは、日本人であればある程度の共通認識があります。
たとえば、「料理油を台所の流しに捨ててはいけない」「ゴミは分別して捨てる」など、外国人には通じないマナーも多いのです。 外国人を雇う場合は、会社が住居を用意する必要があるので、外国人労働者が暮らしのなかで問題を起こせば、会社が対応しなければいけません。
なかには食文化の違いにより、外国人労働者家族が野生動物を捕まえて食べてしまうケースも…… そんなことになれば当然、近隣住民からのクレームは深刻化するでしょう。 北関東では、実習生が近隣住宅の家畜を大量に盗難する事件も発生しています。
・実習生の安易な活用に注意
特定技能実習生制度の活用についても、問題になりやすいところです。 「外国人実習生は日本人より大幅に安く雇える」という認識だけで制度を用いたせいで、後になってから困る経営者が多いのです。 そもそも、実習生をあっせんしてもらう場合は、ブローカーに仲介料を支払わなければいけません。
「外国人を雇えば人件費が安く済むから、仲介料を払ってもなおコストメリットがある!」と考える経営者は多いのですが、実習生といえども、自治体の定めた最低賃金を下回る給与で働かせることは禁じられています。 もちろん労働時間についても、無制限の残業などはさせられません。
結局、ブローカーを通さずに日本人従業員を普通に雇ったほうが割安だった、というパターンは珍しくないのです。
人材不足の解決策は?

ここまで述べたように、外国人労働者を採用して労働力不足の穴を埋めようとするのは簡単ではありません。
やはり、日本人の若年層が選んで入職してくれるような企業を目指すのが、一番の近道。 そのための有効な手立てとして、次の3つの施策を紹介しましょう。
・その1:働き方改革に取り組む!
建設業界を除く多くの産業では、働き方改革が推進されています。
しかし建設会社は、特に中小企業だと社会保険も福利厚生もない、長時間労働が多い、週休2日が保証されない……など、時代から取り残されたような労働環境のところが珍しくありません。人材が定着せず、離職率も高いです。
「きつい、汚い、危険」という「3K」に代表される建設業の悪いイメージを払拭し、多くの若者から志望してもらえるように、労働条件の改善対策を積極的に促進しましょう。
安定して働ける職場環境への見直しで、若年層のみならず、女性からも就職先の選択肢として検討してもらえるかもしれません。
・その2:生産性向上によって待遇を良くする!
最近の「働き方改革」の流れに通じますが、施工のIT化などによって生産性を向上させ、増えた利益で社員の待遇を改善する努力も重要です。
手作業が多くなりがちな建設業界は、他業界よりIT環境の整備が遅れているという実情がありますが、ロボットやICT工事の導入による工期短縮など、効率化に取り組める領域はたくさん残されています。
高齢化が進む建設業界では、経営者や管理職にも年配の方が多いですが、年齢層の高い方も、若手人材と問題なく働けるように、先端技術の習得に励むことが必要です。
・その3:人材育成で職人を育てる
現状の建設会社は、自社で職人を抱えず、元請けから来た仕事を3次請け、4次請けに投げているだけのブローカー的な企業が少なくありません。
しかし政府は、このような建設業界にはびこる多重下請け構造を是正する方針を定めています。 具体的には、多重下請けとしては2次受けまでしか認めない流れになりつつあるようです。
現状では、東日本大震災の復興需要や東京オリンピックを要因とした建設需要で好調であっても、今後、自社に施工能力がないブローカー業者は、仕事が激減する恐れがあります。今こそ、建設会社の本分としてしっかりと施工能力を備えること、つまり自社の職人を育てていくことが求められるのです。
まとめ

将来の見通しが厳しい部分もあるものの、多くの建設会社を見ている現場の実感としては、経営改革によって人材の不足感を克服している会社は、むしろ増えている印象です。
若手人材から興味を持ってもらえる業界に返り咲くため、業界が一丸となって労働環境改善を実現し、若者にやりがいをアピールすることが、いまこそ求められているのです。
著者:小飯塚隼人(こいづか・はやと)
1983年生まれ。前職は大手損害保険会社にて代理店の営業推進を担当。「お客さまに一番近いところで保険を提案して、もっと喜んでもらえる仕事がしたい」との思いから、万が一のさいは保険でしっかりとお客さまを守る保険ショップパートナーの経営理念に魅力を感じ、2015年3月に同社に入社。同年11月に取締役社長に就任。「建設業をサポートする日本一の会社になる」という志のもと、年間2,000件を超える建設業保険の相談を受けるとともに、安全大会の講師も務める。得意分野は事故対応、事故対策、外装系など。趣味は映画、ランニング。
